「鶴瓶の家族に乾杯」で、吉瀬美智子さんと一緒に、盛岡の「わんこそば」に挑戦するお姿が放映されました。
「わんこそば」と言えば、かつてドリフの志村けんさんと優香さんお二人で演じるコントが爆笑ものでしたし、
古くからマンガなどで、閉めたと思った蓋を開けてみると、いつの間にかそばが入っている、といった展開がコミカルに描かれ、そうした給仕さんの早業で記憶してらっしゃる方も多い事でしょう。
ですが、本来の「わんこそば」の位置づけというのは、
「岩手ならではの”おもてなし料理“、お給仕つきのお蕎麦の食べ放題」
(そば処東家HPより)
ということだそうです。
単なる、昔からある食べ放題のそば屋じゃないのですね。
意外に思われた方も多いのではないでしょうか。なので、今回はそうした「わんこそば」について調べてみました。
※ちなみに、わんこそばを初めて取り入れたマンガは、藤子不二雄先生の「オバケのQ太郎」だそうです。ラーメン好きの小池さん、オバQ、ガキ大将のゴジラの三つ巴バトルでした。
ご存知の方は少ないでしょうが。。
「わんこそば」とは?
「わんこそば」は岩手県の名物で、長野県の戸隠そば、島根県の出雲そばと共に、日本三大そばの一つとされています。
食べ方
「わんこそば」は、温かいそばつゆにくぐらせた、一口大のおそばを、
「ハイ、どっこい。じゃんじゃん」
の掛け声とともにお給仕さんが入れてくれますので、
薬味(なめこおろし・まぐろ・白ごま・ねぎ・青しそ・のり・季節のもの)を自分の好みで少しずつ入れながら頂きます。
お腹が一杯になれば、お椀にフタをしてごちそうさまの合図になります。
食べ終わるやいなやお代わりを無理強いするのは、「おてばち」と呼ばれる、客人に対するもてなしの礼儀からで、
やめるには
「給仕が見てる前で、次のそばを入れられる前に、ふたを閉めなければならない」
「椀の中のそばを食べきらねばならない」
といったルールが決められています。
ただ、大食い、早食いを決める全国大会なども開催されていますので、どちらかというとショー的な要素も大きく、面白おかしく演出的な意味を込めて
チャレンジャーを追い込む、といったところもあるのでしょうね。
こうして「わんこそば」は、その美味しさのみならず「大食い、早食い」を競い合う楽しいメニューとして、全国の方に親しまれているのです。
目の前に、豪快に積まれていくお椀の数を数えるのも、楽しいですよね。
(インスタ映えしそう)
名前の由来
では、「わんこそば」の「わんこ」とは、どちらから来ているのでしょうか。
「わんこ」とは、木地椀(漆器)をさす方言です。
岩手県では、語尾によく「コ」をつけますので、「お椀コ」で食べるそば、ということで「わんこそば」と呼ばれるようになりました。
もともと盛岡や花巻などの地域では、客人をもてなすのにそばを振舞う風習があり、
一度に大勢の客にゆでたてを振舞うには、少量ずつお椀に盛って出すしかありません。その作法が、「わんこそば」のルーツではないかといわれています。
ワンちゃんの「ワンコ」では、もちろんありません。
起源説
「わんこそば」の起源には、「花巻説」と「盛岡説」があります。
「花巻説」は400年以上の歴史があり、始まりは江戸時代初期の慶長年間。
当時の南部家27代目当主、南部利直が江戸に向かう際に花巻城に立ち寄り、食事を所望したところ、郷土料理の蕎麦を「お殿様に対して庶民と同じ丼で差し上げると失礼」との発想から、
山海の幸と共に漆器の「お椀」に一口だけのそばを試しに恐る恐る出したところ、利直公はそれを大変お喜びになり、「何度も何度もお代わりをした」という説。
もう一方の「盛岡説」は、
盛岡出身で大のそば好きだった原敬が、夏に盛岡に帰省して、母が住む別邸「介寿荘」に市民を招いてもてなした際に、「そばは椀コに限る」として、中蓋に薬味を載せた「椀コそば」を出したのが広まったという説です。
どちらが本当か、正しいか、とかは分かりませんが、いろいろ説があった方が、興味深くて良いですよね。
大食い記録
「わんこそば」は、お店によって違いますが、大体お椀15杯前後で通常のもりそば一杯分になるようです。
番組で紹介された、盛岡市の「そば処・東家(あずまや)」さんでは、
男性 500杯
女性 753杯(2024/3/1更新)
が最高記録となっているようです。
女性の753杯というのは、もりそば換算で約50杯ですから、にわかに信じがたいですが、どこかのフードファイターが挑まれたのかもしれませんね。
気になる1人前のお値段ですが、先の東家さんで税込4,200円(同店HPより)です。
いろいろ盛りだくさんの薬味がついていますし、何倍食べれば元が取れるか、というのは個人の判断によりますが、753杯頂けば、もりそば換算だと1杯84円。
めちゃめちゃ安いですけど、これを目指して身体を壊したら、元も子もありませんよね。
あと、全日本わんこそば選手権における最高記録は、2018年の第33回大会に、フードファイターのMAX鈴木氏が記録した632杯(制限時間15分)だそうです。
15分で632杯という事は、1.4秒に1杯のスピードでかき込まねばなりません。このスピードであれば、ゆっくり噛んで食べている暇などないでしょうから、全部そのまま飲み込んだのでしょう。
確かに、東京あたりでは、「そばは喉で味わうもの。歯に当たらないように食べるのが粋な食べ方だ。」などとおっしゃる蕎麦屋さんもあるそうですが、
「わんこそば」632杯、全部呑み込んだらどうなるんだろう、って正直思っちゃいますよね。
まとめ
日本三大そばの一つとされる「わんこそば」。名前の由来は、岩手県の方言とお椀にありました。
また、起源とされる盛岡市、花巻市には、それぞれ語り継がれた歴史があって、どちらが真実なのかは分かりませんが、案外どちらも真実なのかもしれないなぁ、と思っています。
大食い記録に関しては、店によって、また時間制限や一杯当たり分量などの条件によっても異なりますので、一概には言えませんが、何百杯という途方もない数を食べていることが分かりました。
いかに早く、そして杯数食べれるか、給仕さんとのやり取り、駆け引きなど、ゲーム的な要素ばかりクローズアップして語られますが、
本来の「わんこそば」は、大事なお客様をおもてなしする為の、岩手で長く紡がれてきた郷土料理です。
楽しく食事をする、という事に異論はありませんが、はるか昔から大切に受け継がれてきた食文化を、間違った認識で穢すようなことはしたくありませんね。
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